プレゼンテーションの技術は、会社の会議や学校の授業など、様々な場面で問われます。
本書は、お笑い芸人としてはもちろん、講演会や著書の出版など多方面で活躍する中田敦彦さんが「伝える技術」を綴った一冊です。

人類の最大の武器は「伝達能力」

「プレゼンテーション」と聞くと、ビジネスの重大な会議など、ごく限られた場面を想定するかもしれません。
しかし私たちは、仕事・プライベートを問わずあらゆる場面で他人とのコミュニケーションをとっています。
そこでは無意識のうちに、自らの「伝達能力」が試されているのです。
著者の中田氏は、人類が持つ最大の武器は「伝達能力」だと断じます。
戦国時代に天下を取った武将・豊臣秀吉は、なぜあれだけの活躍ができたのでしょうか。
もちろん、武術や戦術も大きな意味を持っていたでしょう。
しかし著者は、秀吉の最も長けていた技術は「伝達能力」であると言います。単純な戦力の大きさや強さよりも、周りの武士を上手く言葉で説得して味方につけた技術こそが、秀吉を天下の武将たらしめたのです。
著者が初めて他人を説得した経験は、慶應義塾大学に在学中にお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の結成を決意し、両親にその思いを打ち明けたときだと言います。
勉強一辺倒だった青年がお笑い芸人になるというのですから、それはまさに人生を賭けた「説得」だったでしょう。
その後も著者は、ダンス&ボーカルユニット「RADIOFISH」の結成などで芸能活動の幅を広げる一方、教養番組への出演や自己啓発本の出版など、その知見を生かした活躍を見せていますが、その時々で重要な場面においては「自分の考えを人に伝える能力」が問われてきたそうです。
今日から実践できるオリラジ中田の方法論

本書で紹介される方法論は、どれも特別な訓練を必要とするものではなく、意識すれば今日から実践できるものばかりです。
一般的なプレゼンテーションでは、身振り手振りなどのジェスチャーを使って表現することが多いと思います。
しかし著者は、ジェスチャーをさほど重視していません。著者は、食レポの上手いアナウンサーやミュージカルの役者を例に挙げて、ジェスチャー以上に重要な話し方の意義を説いています。
たとえば、食レポに慣れていないアナウンサーは、食べてから喋り始めるまでの間に「どんなコメントをしようか」と考えていることが、表情に出てしまいます。これでは、どんなに上手いコメントをしても視聴者には料理の魅力が伝わりません。
しかし、食レポの上手いアナウンサーは、食べた瞬間の表情から、「美味しそうだな」ということが伝わるのです。
また、ミュージカルの舞台では、役者は3階席の観客まで声を届かせるよう意識して話しています。
そのようにしなければ、遠くにいる観客には臨場感が伝わらないのです。
実は著者も、舞台でネタを披露するのに慣れていない頃は、後ろのほうの客まで「面白い」と思わせることができず苦労したそうです。
しかし、話し方に磨きをかけたことで人気も上がり、一躍スターの座に上り詰めたのです。
話す内容がどれだけ洗練されていても、聞き手に対して伝わりづらい話し方をしていればせっかくの内容も伝わりません。
著者はTV番組でも自らの博識を披露して視聴者をたびたび魅了していますが、実は話の内容だけでなく、それを伝える技術も非常に高度なのです。
話術に長けた話を聞くときは、話の中身はもちろんですが、どのような「伝え方」をしているかにも注目してみたいですね。
ポイントを押さえて、30分で読める

先ほど挙げた例のほかにも、本書ではすぐに実践できる方法論が凝縮されています。
ですが、本書自体も非常に「伝え方」を意識して書かれているので、濃密な内容にもかかわらず要点を理解しやすく、すぐに読破できるサイズでまとまっています。
じっくり読んでも30分程度で読み終えることができるでしょう。
重要な部分は太字で協調されているので、一度読めば直感的に納得できますし、読み返したときにも内容がより整理できます。
現代人に必須の「伝える技術」

ビジネスや友人関係を円滑に運ぶうえで、「自分の考えを上手く他人に伝える技術」は欠かせません。
「伝える技術」で成功を収めたオリラジ中田氏の方法論を綴った本書は、全ての人にとって必読の一冊です。