著者の豊富な体験を元に、「しょぼい起業」について解説されている本です。
「しょぼい起業」とは、大それた起業ではないということ。
一般的に起業って、「野心家が金持ちになってやる」とか「人生逆転してやる」とか思ってやるイメージですが、「しょぼい起業」はその名の通り、一般的な起業の逆です。
なので特徴としては、ありふれた成功ノウハウではなく、どちらかというと「最低限生き抜く方法」が骨子となっています。
また、全体を通して著者の体験に基づいており、オフィスや店を家にするなどの「しょぼい起業」の具体例が示されています。
本書は単なる自己啓発本ではなく、趣味を仕事にするというような起業本でもありません。
しっかりとした経済学的根拠を基にして、実体験に沿って書かれた内容になっています。

自分にとっての最善の生き方を再認識する

「しょぼい起業で生きていく」は、読者に大きな選択肢があることを示唆しています。
長い人生、辛い毎日に我慢して生きていくのは苦しくないですか?
まず初めに、人生をどうしたら楽に生きられるかを考えることが重要です。
例えば、社会に馴染めなくても様々な生きる選択肢があります。
自分を殺して嫌な仕事を続けるくらいなら、いっそ逃げ出したほうがはるかにましであるはずです。
但し、逃げる方向が分からなければ組織や社会という巨大な捕食者の餌食になるだけです。
私たちは先人が敷いた常識というレールの上で、様々な理不尽を強いられて生きています。
言いたいことも言えない世の中になっており、ストレスばかりが蓄積されていきます。
仕事に関してだと、人生の多くの時間が割かれており、人間関係も会社組織に限定されています。
それが閉塞感を産むことになり、内面を蝕むことにもなりかねません。
それでも人生とはそういうものと割り切りながら、我慢を重ねながら生きているのが実情です。
但し、立ち止まってよくよく考えると、これが人間らしい生き方なのか疑問が湧くものです。
本書はそんな疑問に対して、真正面から応えています。
したたかに生き抜く

現代社会をしたたかに生き抜く心構えが書かれています。
その内容は起業を志す人に限らず、現代を生きる全ての人に参考になる考え方です。
起業と聞けば資金調達や上場をイメージしますが、本書にはそのような堅苦しい話は出てきません。
逆に起業といってもまさにショボイもので、大きな組織のことなど端から念頭に置かれていません。
起業というと利益の拡大を目指すものという常識が蔓延していますが、ポイントは自己の生存が目的で、自己の拡大に焦点を当てていません。
底辺からの回復の転換点

著者は一生懸命働いても割に合わない社会を、ダークサバンナと称しています。
そして、生きることが辛くなっている現代人に対して、サバンナで生き抜くための処世術を余すことなく披露します。
弱い草食動物は、何よりも素早く逃げる術を身につけています。
危険を察知したら、何をおいても逃げることが重要です。
みなさんは逃げる場所を持っていますか?
その場所はけして華やかである必要はありません。
むしろ誰にも見つからない、地味でしょぼい場所であることが大事です。
本書にある視点はこれからの日本社会にとって、底辺からの回復の転換点となるものです。
そして、その裏に根付いている著者であるえらいてんちょう氏の信念が明らかになっています。