人生百年と言われるようになった昨今、高齢になってからの生き方を指南する書籍がたくさん出版されるようになったと感じています。
五木寛之による「百歳人生を生きるヒント」もその中の一つです。
実際に読んだ感想

「百歳人生を生きるヒント」の感想を一言で表現するならば、あるがままに生きることの尊さを知ることができて心が軽くなったということでしょうか。
年齢を重ねるにつれて衰えていく自分の容姿や体力を嘆くのではなく、一つの自然現象と捉えて淡々と受け入れることが大事なのだということがわかりました。
著者の語り口はとても穏やかで、頑張って前向きになれというような厳しさは一切ありません。
この本は、色々なことができなくなる自分をそのまま認めて構わないという著者ならではの優しい眼差しで満ち溢れています。
私自身、読みながら色々と救われる感じがして途中で何度も涙をぬぐいました。
高齢になるということは不安の連続に耐えることだと思っていたのですが、この本を読んでからというもの、年を取るのが楽しみになってきました。
長生きするのは決して悪いものではないということをこの本を通して教えてもらったような気がしています。
本を読むことになったきっかけ

私がこの本を読もうと思ったきっかけは、先に読んで感銘を受けた姉からの薦めによるものです。
数年前に大病を経験した姉はこの先のことを思い悩んで様々な自己啓発本に手を出したらしいのですが、この本が一番心に沁みて希望が湧いてきたと話していました。
私は普段から小説などの虚構の物語は好んで読むものの、こういったジャンルになると途端にテンションが下がって興味を失ってしまいます。
説教のような内容が書かれているのではないかという勝手な先入観を持っていたためです。
そういった訳で、自主的に読むことはまずないような本でした。
しかし、姉があまりに感動している様子だったこともあり、目次だけでも読んでみようという気持ちになってきたのです。
なんとなくページをめくってみた所、著者独特のやわらかな文体で綴られた文章が読みやすく、気が付けばどっぷりと本の世界に入り込んでいました。
先が気になり、家事などを放ったらかして夢中で読みふけってしまった次第です。
本の概要について

「百歳人生を生きるヒント」の概要としては、50才から100才に向けての人生の歩き方が日本人の年代感覚に添って10年ごとに丁寧に説明されているような感じです。
これまでになかった長寿時代という未知の領域を進むための指針として、経済的な問題や介護の問題に対する心構えが具体的に提示されています。
それは、これまでに語り尽くされてきた哲学や人生論をそのまま当てはめたものではありません。
そこには著者のこれまでの人生が反映されており、それは同時に誰の人生にも当てはまるものとなっています。
そのため、読んでいてまるで自分のことのように捉えることができました。
また、人生経験豊富な著者ならではの独特な視点で展開される新たな考え方は、凝り固まった頭を柔らかくしてくれる特効薬のようでした。
50代から90代までの各年代に向けて書かれていますが、それより若い年代の方が読んでも心に響くものがあるのではないでしょうか。
本の内容について

年代別に書かれた内容について説明をすると、50代はこれから始まる人生を生き抜く覚悟を心身ともに元気な時期から考えはじめる時期として表現されています。
いわば、事始めの段階としてスタートラインに立っているような状況です。
還暦以降の60代になると、50代で思い描いた人生の山を下山するイメージを実際に実行に移す時期となります。
そのために著者から推奨されているのが、これまでの生き方をリセットするということです。
70代については、なんと黄金期という素晴らしい名称がつけられています。
この年代は、人生の山を下山する途中で突然出現した平和な丘に例えられており、そこで楽しみながら活力を補充することが提案されているのです。
80代に入ったら社会のしがらみから離れ、自分の気持ちに忠実に生きることが大事だと書かれています。
100歳直前の90代は総仕上げの妄想期として、これまでに培った想像力を駆使して時空を超えた喜びに浸る生き方ができると述べられています。
まとめ

これまで長い人生を歩んできた著者だからこそ思いつくことができたユニークな人生の仕舞い方だと思います。
心優しき人生の先達から元気の出るエールをもらったようで、これから先の人生が楽しみになりました。
コメントを残す