若林正恭さんは、春日俊彰さんと共にお笑いコンビ・オードリーを組んでいる芸人です。
今回は、バラエティ番組に引っ張りだこの若林正恭さんが手掛けたエッセイ集、「ナナメの夕暮れ」の書評です。
若林正恭さんの自分探しシリーズ完結編

若林正恭さんは、2010年から雑誌ダ・ヴィンチでエッセイの連載をスタートさせました。
連載を開始して間もなく、彼の独特の感性に注目が集まりました。
2013年5月、自分探しシリーズの第1弾として、雑誌ダ・ヴィンチでの連載を収めた「社会人大学人見知り学部 卒業見込」がリリースされています。
2017年に発売した第2弾「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」は、キューバ旅行での出来事を書き下ろしています。
若林さんならではの視点や言い回しを存分に楽しめる作品に仕上がっており、「第3回 斎藤茂太賞」を受賞しました。
それから約1年の時を経て、自分探しシリーズの完結編「ナナメの夕暮れ」の発売が2018年8月30日に始まりました。
「ナナメの夕暮れ」は、雑誌ダ・ヴィンチでの連載と共に、書き下ろしエッセイも載せています。
文筆家・若林正恭さんの独特の感性だけでなく、「こんな考え方があったのか」という新たな発見に喜びを感じられる作品です。
発売前から出版業界で話題になり、発売開始から2週間が経過した時点で売り上げ部数が10万部に到達しました。
本作は、卑屈感や皮肉が入り交じっているエッセイですが、思わず笑いが込み上げてくるエッセンスが随所に散りばめられています。
大衆が何も感じずに素通りしている事象に対して、若林正恭さんがツッコミ、異論を唱えています。
心境の変化を描写

「ナナメの夕暮れ」は、40歳を迎えようとしている若林正恭さんに訪れた心境の変化が描かれています。
30代前半までの彼は、自らの意識や考え方に振り回されてしまい、日々の生活を楽しめない状況下にいました。
生き地獄に苦しんでいた彼ですが、40歳を目前にして自分自身や社会に素直に向き合い、生きる喜びを見出しています。
「おっさんが興じる遊戯だ」と言って避けていたゴルフを楽しみ、ラウンドデビューを果たしています。
ゴルフを通じて社会性やコミュニケーション能力が向上し、気軽に話せる異性と出会いました。
これらの劇的な変化が本作には記されています。
「社会人大学人見知り学部」や「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んで彼の成長を見守ってきたファンにとっては、とても衝撃的な内容です。
自分自身に常に違和感を抱いていた彼の成長に、思わず顔がほころんでいる読者は多いでしょう。
以前の彼は心にたくさんの針が生えて物事に過敏に反応していたようですが、年齢の経過に伴って針が抜け落ちたようです。
前進する勇気を与えてくれる作品

「ナナメの夕暮れ」を手にした時、「何故、学生服を着用して笑みを浮かべている若林正恭さんが表紙に登場しているのだろう」と思いました。
彼は芸人ではあるものの、殻に閉じこもってしまう一面があるため、表紙に堂々と登場していることに驚きました。
読み進める中で、彼が歳を重ねて気持ちが変化していることが分かり、表紙の写真にも納得しましたね。
エッセイ集を読む機会は僅かですが、思わず共感してしまう内容だったため、一気に読破しました。
私も彼と同様に現代社会での生きづらさや息苦しさを感じている1人です。
人とのコミュニケーションに煩わしさを感じることが少なくありません。
しかし、彼の作品を読んで、自分自身と向き合う勇気を貰えたような気がします。
彼は適応能力が高まったことによって、仕事へのモチベーションの低下を感じているようですが、それを上回る充実感や満足感を得ているようです。
私も下ばかり向かずに、しっかりと前進していきたいと思いました。
冷めた目で物事を見てしまう方々にオススメ

ナナメの夕暮れは、大衆とは異なる視点から物事を見てしまう若林正恭さんの特質が凝縮されています。
現代社会で生きづらさを感じている人達、常に物事を俯瞰的に見てしまう方々にピッタリです。
この作品を読めば、周囲の人々と同じように気持ちが高揚しない違和感を解消できます。
自分自身の意識を変える大切さ

「ナナメの夕暮れ」を読み進める中で、自分自身と向き合う大切さを教えてもらいました。
自分自身の言動や意識を改革することが、明るい未来を切り拓く第一歩なのだと感じました。
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